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ジリリリッと目覚まし時計の音が、部屋に響く。もぞもぞと布団が蠢くと、伸ばされた手で目覚まし時計を止めた。
止めたはいいが、止めた本人は起きる気はないのか、伸ばした手はそのままで寝ている。
それから五分が経ち布団の主は一向に起きず、そのままなのかと思いきや、部屋の扉が開いた。入ってきたのは女性で、栗色の髪を腰までおろしていた。
「凛さん。もう起きる時間ですよ?」
ユサユサと布団の主を揺らしているが、結果は起きない。次第に女性の目には涙が溜まっていき、今にも溢れそうだ。
「ヒグッ……り、凛さんは私の作った朝食がいらないんですね。わ、わかりました……ウ、ウウウ」
「あーーーよく寝た! うん、朝は早起きが一番だ! 麗奈さんおはようございます。起きたのでどーか、どーーーか、泣かないでください」
布団から出てきたのは麗奈と呼ばれた女性と同じ栗色の髪で、肩に届かないぐらいの長さに整えられている。
顔は中性的で女子としてみられることもしばしば……だが、布団から飛び起きて見事なスライディング土下座を決めているのは男子である。
「あらあら土下座なんてダメでしょ? 女の子なんだから」
「何度言えばわかるんですか。俺はお・と・こです」
そう言った少年――蓮華 凛(はすか りん)は着替えるから出てってと言って麗奈を部屋から出した。
凛はクローゼットから制服を取り出し、ふと部屋にある鏡に写る自分と目が合った。
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