プロローグ

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「麗奈さん。行ってきます」 「はい、行ってらっしゃい」 「待たんか、私にも言うことがあるだろ」 「………………行ってきます?」 「何故疑問系だ」 こんな会話もこの三人にとっては日常。凛が手を振り、学生鞄を持って玄関を出た。 凛の学校は自宅から二十分くらいの場所にあり、凛は徒歩で通っている。 空は雲一つ無い快晴。最近雨が降らないせいか、空気が乾いている。 「……あっ、弁当忘れた……」 朝が少し弱い凛は抜けていることがあり、弁当を忘れることもしばしば。 そういう時は近くのコンビニでおにぎりや、パンを買っている。凛の財布の中には三千円が入っていて、買うには不自由しない。 コンビニに入り、おにぎりを三個、パンを二つ買ってコンビニを出た。 「げっ、もう八時半か。少し急ぐか……」 少し早足になりながら学校を目指していたが、人通りが無いところに奇妙なものを見た。 鍔が深い帽子にロングコート、レンズが大きいサングラスに白いマスク。どっからどう見ても不審者だが、凛はどうしてかその人物が気になった。 後を追うようにその人物を追ったが、見失ってしまった。 「あれ? 確かこっちに……」 振り返り、来た道を戻ろうとしたが、何かにぶつかった。さっきの黒づくめの人物だ。 「フ……フフ……フフフッ」 小声だったが微かに笑うような声が聞こえた。黒づくめの人物はそのまま去り、凛は慌てて待って、と呼び止めようとしたが声が出なかった。 それどころか急に糸が切れた人形のように崩れたではないか。凛は何が起こったのかわからず、そのまま意識を闇に沈めた。
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