第零章 ~神との邂逅~

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そこには上下左右前後、全てが真っ白な空間があった。だがそんな真っ白な空間に異物のように少年がいた。 栗色の髪に、華奢な体つき、間違いなく蓮華 凛である。凛は身動ぎ一つなく、死んでいるように横たわっていた。 そんな凛を尻目に、真っ白な空間にヒビが入った。少しずつだが、静かにヒビが広がり、ついには白い空間が砕け散った。 「あれ? ここは……」 真っ白な空間が壊れると同時に凛はゆっくりと起きた。キョロキョロと辺りを見る凛は、今いる空間にハテナマークを頭に浮かばせている。 茶色と赤色を基調とした高価そうなカーペット、本をぎっしりと敷き詰めた本棚が、部屋を囲うようにあり、その奥には現代ではほとんど見ない暖炉があった。 「何だ……ここ」 「何だとはなんだ。ここは私の書斎だ。少し……私の趣味が入ってはいるが」 突然声が聞こえたほうを凛は向き、後ろにいた男を凝視した。真っ白な白いローブに、片手には分厚い本を持っている。 凛は辺りを見たときにいなかったはずの男を見て、この人なら今の状況をわかるのではないかと、妙な自信があった。 「あぁ知っている。なんせ、私は神だからな」 「…………は?」 凛は心を読まれたより、自分を神だという男に驚いた。普通に考えれば、神だと言ってる男を精神科に通うよう勧めるのが優しさだろう。 だが、さっきの妙な自信のせいでこの男を神だと信じそうになっている。
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