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「まだ疑うか。しかたない……君が七歳になったとき、おねしょをしてどうこの状況を切り抜けるか考えて、押し入れから新しいシーツを取り出して、おねしょをしたシーツは焼却処分した。あとは……机の右引き出しの上からも三段目は三重底になっているが、フェイクで本命は床板を外した僅かな隙間に――」
「いい! それ以上はもういい! あなたのことは神と認めたから!」
神と名乗る男の言葉を遮るように大声を出す凛、その顔はリンゴのようにかなり赤くなっている。
「そうか、ならばいい。では……単刀直入に言おう」
ゴクッと無意識に口の中に溜まった唾を飲み込む。凛は知りたかった。何故、こんな状況になっているのかを。
「――君は死んだ」
今の言葉を聞き、凛は絶望を顔に染めて――はなく、ただ死という言葉が日常に無いだけで、いまいちよくわからないのだ。
「何だ、驚かないのか?」
「いや……その……実感が」
「実感か……よし」
何がよしなのかわからないが、神は指を鳴らした。
何秒経っても何も変化がなく、凛は怪訝な表情を浮かべていたが、胸辺りの服を強く掴み、床にうずくまった。
凛は自分の身に何が起こっているのかわからなく、ただ神を見つめていた。
「それが君の死因。胸部刺傷による出血多量。今の胸の痛みは、胸を刺された時の痛みだ」
胸が刺されたことなんてあったか? と今朝の記憶を思い出していたら、黒づくめの不審者にぶつかったことを思い出した。
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