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好奇心猫を殺すとはよく言ったものだ。凛は自重気味に苦悶の笑みを浮かべる。
朝麗奈に起こされ、誠二と毎回やるやり取りをやり、いつもの日常、変わらない日常だと思っていた。
それが、自分の好奇心ですべて壊れた。
「そう気に病むな。君にチャンスをあげよう」
神は指を鳴らして凛の死因となった痛みを消して、右手に持っていた分厚い本を開いた。
「君は運がいい。私はこれでも多世界を統括する神でね、君を違う世界に転生させよう」
「……………」
「不満かい?」
黙っていた凛を心配しているのか、椅子に座るよう促し、凛は椅子に座った。
「ふぅ~。君はコーヒーがいいかい? それとも紅茶がいいかい?」
「……コーヒーで」
そうかと答えた神は指を鳴らして、何もない空間から二つのマグカップを出した。
二つのマグカップには黒い液体と赤色の液体が入っていた。おそらく、黒い液体がコーヒーで、赤色の液体が紅茶だろう。
「……いただきます」
「……家族が心配かい?」
ビクッと体を震わせる凛。神はすべて知っていると言いたげな顔をしている。
「まぁ死んだ自分より、他人を心配する君は優しいのだろうね」
「俺がいなくなれば、きっとあの二人は悲しむ」
「だろうね。でも、君の代わりはいるから安心しなさい」
「どういうこと?」
「あの二人の間に新しい命が宿っているということだよ。不幸は幸福で覆い隠せるからね」
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