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あの二人は……と呆れていた凛だが、さっきまで見せていた悲しい表情から家族のことを想う表情になった。
「だいぶ柔らかくなったね。どうする? 転生するの? しないの?」
凛は考えた。転生すれば新しい人生を歩める。だが、転生しなければどうなるかわからない。
「俺は――転生する」
「そうか! いい判断だよ。それじゃあ……」
どれがいいかなぁと鼻唄を歌いながらパラパラと、本を捲っている。
不安に刈られながらも、凛は次の人生はいったいどんなとこか、思い馳せていた。
「――これだね、君の次の人生はこの世界だ」
「どんな世界なんだ?」
どんな世界なのか気になる凛は、見ようと椅子から立ち上がるが、神がそれを遮った。
「あ~ダメダメ。規定でこれを見せるのはダメなんだ。行ってのお楽しみということだ」
「ならしかたないか」
「転生する際の注意事項を言うね。記憶を持ったまま転生はできるけど、十二歳ぐらいまでは記憶を封印するから。でないと、体が膨大な記憶に耐えられなくて死ぬから。あと、転生した世界で死んだらもう転生することはできないから注意してね」
神による注意事項を聞いた凛はわかったと、頷いた。
「目を閉じて……」
言われるがままに目を閉じ、転生する時を待つ凛。神も目を閉じて右手を凛に向けて呪文めいた言葉を発する。
「ウル・カル・ケイルス・サントス・フルーラル」
わけのわからない言葉と同時に凛の周りが白く光る。沼に足を突っ込んだように、ズブズブと沈んでいく。
胸ぐらい沈むと、神が突然話しかけてきた。
「次の君の人生に幸あらんことを」
その言葉を聞くと同時に、凛の意識はゆっくりと沈んでいった。
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