天誅

3/5
前へ
/80ページ
次へ
そこで珠子はもう一発、男たちの足元に威嚇射撃をした。 そして叫ぶ。 「早く来てくれ!全員確保できん!!」 その怒鳴り声に、男たちは珠子の後ろに本当に何人かいると感じたらしい。 「くそっ!退けっ!!」 男たちの誰かがそう叫んだ瞬間、男たちは我先にと、その場から逃げ出していった。 それでも何人か戦おうと日本刀を構えていたが、仲間たちが逃げ出していくので動揺したようだ。 仲間の後に続いて、残りの男たちも逃げ出したのだった。 「しっかりして。大丈夫ですか?」 男たちがその場から立ち去っていくと、珠子は囲まれていた男の元に向かう。 男は意識もしっかりせず、後頭部からはおびただしい量の出血が見られる。 「とにかく…救急車を…」 呼ぼうとしたが、携帯は圏外だという事を思い出した。 「ちっくしょうっ…」 およそ女性らしからぬ声を上げると、着ていた紺のブレザーを脱ぎ白いシャツも脱ぎ捨てた。 そこでシャツで男の後頭部を押さえつけ、止血だけでも試みた。 その時だった。 珠子の背後から、先程の男たちの残党と思われる男が一人、抜き身の刀を片手に近づいてきていた。 男はある程度まで接近すると 「天誅!!」 と叫び、珠子を斬ろうと刀を振り下ろす。 「っ!?」 男の気配に全く気付かなかった珠子は、なすすべもなく男に斬られる。 ……はずだった。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加