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「ぐあっ……」
咄嗟に拳銃を構えた珠子だったが、その前に男が倒れていった。
「………何だ?」
見ると男の背後に、もう一人男が立っていて、その男が助けてくれたらしい。
男は暴漢を斬った刀を懐紙でぬぐうと、刀を鞘に納めて珠子のほうを見つめる。
男は30前後の背の高い男で暗闇で見ても、なかなか端整な容姿をしていた。
「大丈夫か?」
男は人を斬ったにも関わらず、返り血一つ浴びていない。
そして珠子の前にひざまずくと、珠子と襲われていた男を交互に見る。
「そいつ…もう死んでるぞ」
あまりにも突然の出来事に、しばらく放心していた珠子に男はそう言い放つ。
「え…?」
慌ててシャツを押し当てていた男を見ると、すでに事切れていた。
「そんな……」
と、珠子は泣くにも泣けず、悔しげに唇を噛み締める事しかできなかった。
「そいつは、俺の師匠…とも言える男が惚れ込んでた女の息子でな。
あの浪士どもに連れ去られたと聞いて、居ても立ってもいられず来たんだが…」
男がボソリと何か言っていたが、珠子には聞こえていない。
(こんな人が、どうしてこんな目に…)
という、何とも言えない悔しさと男を死なせてしまった悲しさが入り交じり、珠子は放心状態だった。
(それに、ここは一体どこ…?)
そんな戸惑いもあり、大分疲れもたまっていたらしい。
「おい、大丈夫なのか?」
と、男が珠子の肩を掴んだ時、すでに珠子の意識はなく…。
珠子は男の方へ倒れていった。
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