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慌てて珠子の体を支えて横抱きにした男は、珠子の格好に驚いた。
(こいつ、異人か…?)
見た目は黒髪に白い肌で、普通の町娘と変わらない印象だが、暗闇に目が慣れてくると、珠子の着ている物が普通ではない事に気づいた。
珠子は紺色のブレザーに同じ色のワッペンをつけた帽子、それにスカートをはいている。
ブレザーとシャツは脱ぎ捨てているため、上半身は下着だけになっているが…。
これを現代の人間が見れば迷わず
「婦警さんだ」
と分かるものだが、残念ながら、ここは現代ではなかった。
(この女子は…)
今、男の…弥七の腕の中にいる珠子は、声を聞くまで弥七も女とは気付かなかった。
弥七は取りあえず珠子の上半身に自分が着ていた羽織をかけると、珠子を安全な場所まで運ぶ事にした。
(それにしても、この女子は一体…?)
弥七は義侠の心を持っているとはいえ、この正体不明の珠子を連れて行く事に、少なからず抵抗を感じた。
だが、放っておくわけにもいかない。
(宗像さんなら、何とかするだろう)
そう思いながら、弥七は凍てつくような寒空の下、珠子を連れて帰っていった。
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