金髪ドリルといえばワタクシでしてよ。

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 街には人らしき姿は見当たらない、しかし何時もの面影は形を潜めて、広がるのは無残に残る傷跡のみ。建物は粉々にされ、と逃げ遅れた人の亡骸が横たわっていた。 「……遅れましたか」  淡々と呟いた少女は、苦虫を噛み潰したような表情を一瞬浮かべ、再び無表情へと顔を戻す。 「被害は?」  付き添いにやって来たマーカスが手短に状況を説明する。  話によると、人的被害はどうにか最小限に食い留めた。が、建物の損害はかなりの物らしい。バラバラに砕けているタイル張りの地面とレンガ造りの景色がそれを物語っている。 「分かりました、それで標的は?」 「標的は一体。現在学生街の中に逃げ込んでる。捜索中だ」 「街に逃げたのですか、……厄介ですね」  そう、この学生街は人の出入りが激しい為構える店も少なくない。それにより商店街は一つに留まらず複数出来、かなり入り組んだ地形になってしまった。一体を探すにはかなりの労力が要るだろう。 「見つけ次第報告するから、お前はアップでも済ませとけ」  そう言ってマーカスは町の中へ走っていった。  マーカス、この殺伐とした状況でアップなんて冗談でも笑えませんわ。  いつもはふんぞり返る少女は珍しく苦笑いを浮かべた。  彼女の名はルシーナ-トゥエロフ。没落寸前の貴族トゥエロフ家の次女であり学生街一の問題児。  そんな彼女には唯一の肉親であるガブリエルにすら教えていないもう一つの顔がある。  それが全国にて指名手配されている非営利組織……ネストリア教団の一兵士。  そして、人類で唯一悪魔を退治出来る人間である。
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