突撃、隣の悪魔さん

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 捜索員から連絡があったのはマーカスが現れて三十分程後だった。既に痺れをきらしていたルシーナは待ちわびたか、バンから出た後、ハイスピードで路上を駆け抜けた。 「全く、見つけるのが遅いですの。あれだけ時間があってはアップどころか修行になりますわ」  愚痴りながらも複雑な道を迷うことなく進み続ける。目的地は十五番市街区、学生街の北西方向に位置する場所だ。バンからは約一キロ程離れている位か。 「そろそろですわね」  そう呟くやいなや、突然黒い影が横から飛び出してきた。  影の正体は、トンボのような頭に、ライオンの胴体が無理矢理接合されたような感じの化け物。名をオキュルムスといい、昆虫種の下級悪魔ですばしっこく、強靭なアゴで噛みついてくるのが特徴だ。  化け物は頭をグラグラと揺らめかせ、アゴを何度も噛み合わせ、ジャキジャキと音を鳴らす。今にも飛びかかりそうだ。  それを見てルシーナは一瞬嫌な顔をした後、懐から瓶の中の錠剤を取り出した。 「さて、気持ちの悪い悪魔さん。害虫退治を致しましょうか」  錠剤を一粒飲み込んだ。  すると、肌色を薄くしたやや白めの肌がジワジワと黒く塗りつぶされていく。次第にそれは浸食するかのように全身へと広がり始めた。そして遂に体全てが黒に染まる時、少女の頬や所々に紅い模様が浮かび上がった。  「行きますわよ」  遂に、悪魔と人間の闘いの幕が切って落とされた。
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