突撃、隣の悪魔さん

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 悪魔がすばしっこく爪による一撃……ヒットアンドアウェイを繰り返す間、それを軽くいなしつつブツブツと詠唱を始めた。 『グラン・レオ』  詠唱が終わった途端、ルシーナの掌から人間サイズの炎獣がヌッと飛び出した。その色はどす黒く、どこか禍々しいオーラを放っている。  炎獣は悪魔目掛けて突進しひとっ飛びで間合いを詰めにかかる、がそんな速度をも軽々と避け、流れるように飛び出す。  勢いに身を任せた悪魔はトップスピードのまま突進。ルシーナへと襲いかかる。  悪魔の鋭利な爪が目と鼻の先まで差し掛かった次の瞬間、 『甘いですわよ』  避けられた筈の炎獣の爪が後ろから悪魔を切り裂いた。背中からはおびただしい量の血が吹きだし、傷口にはうっすらと燃える黒炎が浮かび上がっていた。  「グラン・レオは敵に当たるまでどこまでも追いかけますの、逃げることは出来ませんわ」  不敵に笑い、今度は二体のグラン・レオを呼び出した。現れた二頭の獣は一心不乱に獲物へを目指す。しかし、悪魔も学習したのか今度は逃げるようなことはせず、四肢を大きく広げ、構え始めた。  『ギュルルルルルリィィアアアアア!!』  聞くだけで不快になる雄叫びを上げた後、弾丸のような速さで顎部分から鉛色の液体を吐き出した。  鉛色の液体は光線のように飛び出し、二頭の獣を串刺した。すると、鉛色の光線は獣達をみるみる浸食し始め、グロテスクな音を立てながら体を潰し始め、ついに獣は跡形も無くなってしまった。  何て気持ち悪いのでしょう。ワタクシの美しいボディがグラン・レオの二の舞になるのを考えると、少し身震いをしてしまいました。  ……あの攻撃だけは避けた方が宜しいですわね。
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