4*東雲さんと海

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*** 「まさか、愛佳も先生のことを好きになるなんて…思いませんでした」 肩を落として唇を尖らせながら、缶ジュースのタブに指をかける。 隣で、有沙さんがぼんやりと空を見つめつぶやく。 「そーだよね…しのちゃんにとっては、ひーちゃんは親友だもん。親友と同じ人を好きになるって、ちょっと悲しいよね」 「…さっきから聞き流してましたけど、しのちゃんって東雲のしのですか?」 「?…今更そんなこと聞く?当たり前だよ。それ以外はなんだっていうの?」 きょとんと首を傾ける有沙さん。 私は呆れ顔を浮かべた。 「…でも、本当に有沙さんの言う通りです。」 視線を落とし、サンダルを履いたつま先を見つめる。 「青葉先生って、何なんでしょう」 「……え?それは…どういう質問と受け取ればいいの?」 「んー…なんていうか、こう…惹かれる、とでも言えばいいのかな。色気があるんですよ先生。あの優しい瞳で見つめられたら、体中が痺れて動けなくなるんです。まるで薬みたいに。」 自分で問いかけた質問に、自分で答える。 静かに聞いていた有沙さんは、ふふと笑った。 「でもさ、同じ人を好きになるっていうことはつまり…」 「?」 「仲良いってことだよね。」 度肝を抜かれた。 「成る程、そういう考え方もできますね」 「そうだよ。」 「そうですね。」 「うん。」 思わず顔が綻ぶ。 「そう思うと、気が楽になります。いつまでも愛佳と私は、仲良くいられる。そんな気がします。」 「ん、違う違う。そんな気がするじゃないよ。」 「え?」 有沙さんはにこりと笑いかける。 「いつまでもしのちゃんとひーちゃんは、仲良くいられる。そうなるんだよ。」 思わず目が丸くなる。 そして、優しく細まった。 「…あー、有沙さんには、驚かされてばっかりです。」 「あはは、よく言われるよ」 あっけらかんとした笑いが、空に響いた。
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