4*東雲さんと海

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*** 「…はぁ…」 細く開いた口からは、ため息しか出ない。 それほど、俺は困り果てていた。 海の家の横にあるベンチで、額を押さえる。それは、困った時の癖だった。 「まったく、色男は困るねー?涼介ちゃーん」 横から、俺の気持ちとは真逆の、明るい声が聞こえた。 そちらを向くと、にんまりと笑みを浮かべた京が立っていた。 「…人がこんなに困ってるっていうのに、なんだよその顔は」 「他人の不幸は蜜の味♪」 「最低だな、お前」 じとっと目を吊り上げて睨むが、京は知らんぷりしてどっかりと俺の横に座った。 「女子高生二人に同時に思いを寄せられるってのは、一体どーゆー気持ちなの?」 「全く嬉しくない。」 顔をしかめてきっぱり即答したが、はっと思い出したかのように慌てて弁解した。 「あ、いやいや、東雲さんの気持ちは死ぬほど嬉しいけどね。それに平山さんに想われるのも、邪魔だって思ってる訳じゃない。ただ…」 「ただ?」 「困るんだ」 眉毛を八の字に下げる。 「確かに俺は、東雲さん以外の生徒には興味が無いよ。だから平山さんの気持ちに答えてやることができない。でもさ、それだけじゃないんだよ。」 俺はそこで一度言葉を切った。 「東雲さんの気持ちが変わらないか、心配なんだ。」 京は黙って聞いている。 「俺が平山さんに告白された事によって、東雲さんは親友の為に身を引くかもしれない。」 「身を引くまでとは行かなくても、気まずくなって自然消滅になるかもしれない。」 「それに東雲さんが、やっとできた本当の親友から引き離されるなんてことがあったら、俺は耐えられない。」 表情がどんどん曇って行く。 その時、今まで無言で聞いていた京が、静かに口を開いた。 「自意識過剰」 「え、ええ!?」 京の言った意味が分からない。
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