5*東雲さんと新学期

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「フンフフフーン♪」 やや音程を外しぎみの鼻歌を披露しながら歩くのは、平山 愛佳。 愛佳が通う桜丘高校は、今日から新学期が始まる。 「皆、元気かな~?」 うふふと笑いながら校門を抜ける。 上履きに履き替え、階段を上がった。 「おは…んぶっ!!!」 教室に入った瞬間、何かが愛佳の顔にぶち当たった。 それは愛佳の顔の前で、わさわさと音をたてている。 「!?!?な、なにっ!?」 慌てて『それ』から顔を引き離し、勢いよく空気を吸う。 ぼやけていた視界がやっと元に戻り、目に映ったのは晴れやかな笑顔を浮かべた和哉だった。 「い、井上く…」 「おはよう愛佳ちゃん!今日は新学期スタートに相応しいとてもいい天気じゃないか、神様も新しく始まる二学期、そして僕達を祝福してくれているのかもしれないね!さて、今日は夏らしく向日葵の花束を取り寄せたんだ。いい香りだろう?君の笑顔も向日葵の様に美しくて可愛らしいよ!」 「長い、長いよ井上くん…」 若干引きぎみの愛佳は、和哉をやんわりと押し返した。 その後ろには、呆れた表情で祐樹が立っている。 「あっ、祐樹くん!元気にしてた!?」 「おう。元気だったぜ。お前は?」 「もちろん元気だよ~!」 「ね、ねぇ…花束ぐらい受け取ってくれても良くない?」 楽しそうに話している二人を、和哉は悲しそうに見つめる。 「…あれ、そういえば亜子ちゃんは?」 「それが俺も知らねぇんだよ。珍しいな、あいつが遅刻なんてほとんど無いのに」 「そうだね…心配だな。」 「うん…どうしたんだろ、亜子ちゃん」 そう呟きながら、愛佳は上を見上げて首を傾けた。
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