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そのまま二人は楽しそうにそうめんをすする。私はひとまず食べ終わったのだけど、何だかタイミングを失い立ち上がることができなかった。
ろくに話に入ることもできず、床に着かない両足を遊ばせていたら俯いていた顔をおばあちゃんがいつの間にか覗き込んでいた。
「なんだい?もう食べないのかい?」
「え……うん」
「なら、ご馳走様をいいなさい」
「ごちそうさまでした」
ぱんっと手を合わせてそうめんにお礼を言った。
食器を片付けようと思い席を立つと、おばあちゃんも食べ終わったのかゆっくりと腰を上げた。
「真亜子、少し散歩でもしようか」
「……散歩ってなにするの?」
突然の申し出に私は持ちかけた箸をテーブルに落としてしまった。
「散歩はさんぽだろう? 香苗さん片付け頼んだよ」
「ええ、じゃあお使い頼んでもいいかしら?」
「ああ、私は先に外にいるから。真亜子お願いね」
そう言うと、おばあちゃんはそのまま台所を出て行ってしまった。
「じゃあ、まぁちゃん。紙に書くから待っていてちょうだい」
「おばさん、私行くなんて言ってないよ」「あら、嫌なの?」
おばさんの笑顔が眩しくて私は目を落とした。
「そういうわけじゃ……」
「とにかく、はい。これお願いね」
おばさんが渡してきた紙切れにはヒヨコの柄が印刷られていて、可愛らしい丸文字がいくつか並んでいた。
「頼んだわよ」
「やだ、おばあちゃんは勝手すぎるよ……」
おばさんもと心の中で付け足した。
「私こんなところ来たくなかった」
「まぁちゃん……」
のどの奥がぎゅっと誰かに掴まれた感じがして、気持ち悪くなる。なんとか唾を飲み込むと私は台所をあとにした。
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