序章・謎の男

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「・・・お前、何考えてるか分からねぇよ。別れようぜ。じゃ」 付き合って2ヶ月になろうとしていた時、唐突に別れを告げられた。 繁華街にある喫茶店。 平日昼間の3時過ぎだからか客はまばらだ。 客はそれぞれ会話に花を咲かせていたから、私達の別れ話を聞いているような人はいない。 私は前に座る男の顔を見つめた。 二枚目ではないけれど、目は二重で、唇は薄い。中肉中背で、服のセンスも悪くない。 性格は真面目でやや几帳面。連絡だってマメにしてくれたし、デートの帰りは必ず家まで送ってくれた。 だけどそんな彼に別れを告げられても、私の中には未練や憤りは無かった。 告白されて付き合ったからなのか、或いは・・・。 私が物思いに浸っていると、 ガタン 彼が席を立った。 「もういいよ。じゃあな」 投げやりに言うと、自分の頼んだメニュー分だけ支払いを済ませ、彼は足早に店を後にした。 私はそれでも椅子に座ったまま、頼んだケーキを口に運ぶ。 ここ最近のお決まりの恋愛パターンだから慣れてしまったのかも。 だからって性格は変えられない。 それに告白してくるのはいつも男からで、私はただ付き合ってあげただけなのだ。 仕方がない。私にはずっと片思いしている人がいるのだから。 ケーキを食べ終えると紅茶を飲み干し、私もさっさと店を後にした。
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