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桜が咲き誇る道を歩きながら、花びらがはらはら落ちるのをぼんやり眺める。
4月半ばだけどまだまだひやりとした風が花びらを散らしていく。
私は知らず歩幅を広げ、家路を急いだ。
桜を見ると彼を思い出してしまい、いつも胸がきゅっとなってしまう。
家に着くなり自分の部屋へ向かおうとした私を妹が呼び止める。
「あれ、早かったね。デートじゃなかったっけ?」
居間から顔だけ除かせ問う妹に、一瞬足が止まる。
直ぐに気を取り直して去ろうとしたが、
「はぁ~、またフラれたんだ。いい加減現実を見なって」
ため息混じりな妹の言葉が突き刺さるが、先の別れと同様気にならない。
私は聞こえないフリをして、自室のドアを閉めた。
ベッドにバッグを放り、ある物を大事に取り出す。
ウォークマンを差し込み電源を入れると、気分はぐんと晴れやかになる。
やがて、張りがあるけど柔らかい声音の歌手が歌うオープニング曲が流れ、ゲーム開始画面が映った。
私はベッドに横たわると「続きから始める」を迷わずタッチペンでタッチする。
すると昨日セーブした場面がパッと映り、片思い中の彼が現れた。
乙女ゲーム・薄桜鬼。
主人公の一人、斎藤一。
それが今、私が片思いしている人の名だ。
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