1367人が本棚に入れています
本棚に追加
美しく生きると書いて『美生(みう)』
美月の分も生きて欲しいと、志織さんが付けたんだと三善は言った。
美月が逝ってから、3ヶ月程が過ぎていた。
相変わらずの残業で、タバコを吸いに屋上に出たところに三善から連絡が入った。
3日前に子供が生まれた事を知らせる三善の声は、落ち着きながらも嬉しい気持ちを隠し切れない様子で、彼が立ち直っている事が伺われた。
「…いい名前だ。
無事に生まれて良かったな。
おめでとう。」
「ありがとう。」
「ただ…」
「ん?」
「美月の美に、…生夢の生とも言わないか?」
一瞬の間の後、三善は笑った。
「…フッ、やっぱりそこ突っ込むか。」
俺の突っ込みに動じない様子から、三善にとって想定内だったようだ。
「否定しないんだ。」
「まあね。」
その開き直りとも言える三善の言葉に、思わず俺も可笑しくなり、笑ってしまった。
空を見上げると、綺麗な満月が浮かんでいる。
俺は笑いながら、心の中で美月に話しかける。
…美月、
三善は大丈夫だよ。
じゃあと言った三善に俺は、思わず言っていた。
「月が綺麗だな。」
最初のコメントを投稿しよう!