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「…ご無沙汰してます。」
「こちらこそ、…娘の我儘で何ヶ月もご無沙汰してしまってごめんなさいね。」
「…え、いえ、それは
「いいのよ、それで。」
彼女は俺を遮るとにっこり笑った。
「人生はケ・セラ・セラ。
なる様にしかならないの。
何もかもを受け入れ、何もかもを許す。
その先に道はあるものよ。」
元々銀座のクラブのママをしていた彼女は、先妻が亡くなった宝生家に後妻として入り、志織を産んだと聞いている。
そのせいか、正妻なのに、表には余り出てこない人だった。
いつも控え目に一歩下がっていた義母が、こんな風に彼女の意見を話すのは始めてだった。
「志織が選んだ道なら、…私達親は見守るのが道なのよ。」
やがて、母に続き、仕事を終えた父親達も来て、俺達はその時を待った。
時折、聞こえる志織の声は、俺も含め男達にはキツイ物だったが、母親達は平然としていた。
岡崎がパンやおにぎりを調達して来たが、食べたのも母親達だけだった。
時間だけが過ぎ、落ち着かない時を刻む。
俺は、ソファから立ち上がると、窓辺に寄りかかった。
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