エピローグ

3/3
前へ
/241ページ
次へ
「えっ?…ああ、お前も見てたのか。」 その言葉を聞いて、何処かで月を見上げている三善の姿が浮かんだ。 月を見上げながら、以前は美月としていた会話を、三善としている事に苦笑する。 「生夢。」 「ん?」 「俺、そっちの趣味は無いから。」 「…え、どういう事?」 「…」 意味が解らず俺はもう一度三善に聞く。 「そっちの趣味って…」 突然、三善は笑い出した。 意味が全く解らず、俺は黙って三善の笑い声が治まるのを待った。 「生夢ってさ、夏目漱石のI love you って知ってる?」 ひとしきり笑うと三善が聞いてきた。 「夏目漱石?…いや、知らない。」 「…そういや、理系だったな大学。」 勝手に納得している三善は、意味が解らない俺を置いてきぼりにして、どこか楽しそうだった。 「…美月に『月が綺麗だね。』って言った事は?」 「…え?…ああ、有る…かな。 さっきから質問ばかりだな。」 「…ふーん。」 突然不機嫌な声になり、三善は言った。 「調べてみなよ。 じゃあ、またな。」 タバコに火を付けて、俺は『夏目漱石のI love you 』を調べた。 その答えに戸惑い、照れ、やがて笑いが込み上げた。 そっちの趣味って… あ、さっきの不機嫌な態度はヤキモチか… 俺はタバコを吸いながら、1人で笑った。 そして、俺はもう一度、月を見上げた。 美月、 『またな。』って三善が言ってたよ。 「さて、頑張りますか。」 俺はタバコを消して、立ち上がると屋上のドアに向かった。 ーENDー
/241ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1367人が本棚に入れています
本棚に追加