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「っ!」
声にならない声が聞こえて振り返ると、美生を覗き込むように、ベビーベッドの手摺りに捕まる岡崎の様子がおかしい。
「…岡崎?」
車の中から、出るのに3分。
手を差し出したが、かえって痛い思いをしそうだと、遠慮がちに断られた。
岡崎の荷物とスーツの上着を持って、エレベーターの前まで歩く。
振り返ると、直立不動でちょこちょこ歩く岡崎の様子に、思わず笑いが込み上げるが、なんとか耐えた。
蒸し暑いこの季節に、コルセットを巻いているせいか、岡崎の顔からは汗が噴き出ていた。
微妙な振動や動きだけでも、激痛を感じるようで、汗を拭く様子さえぎこちない。
目の前で笑う訳にはいかないなと気を引き締めた。
エレベーターに乗り込むと、ホッとしたのか、岡崎が情けない顔で言った。
「ご迷惑をおかけして…本当に申し訳ありません。」
「…迷惑じゃないから、気にするな。」
ベビーベッドの美生を覗き込もうと屈んだ瞬間、ギックリ腰にみまわれた岡崎。
病院に連れて行くと、全治1週間と診断された。
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