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麦茶をいただき、そろそろお暇しようと席を立った時だった。
ふわっと何かが足に触れた。
…えっ?
足元をゆっくり見下ろすと、白い猫が俺の足にもう一度擦り寄った。
そして、最後に頭から大きく擦り寄ると、そのまま足元に寝転び、俺を見上げて鳴いた。
「ミ~。」
「ミィ?」
テーブルの下を岡崎の母親が覗き込んだ。
「あら、珍しい。お客様にご挨拶に来るなんて久しぶりね。」
彼女は顔を上げて俺に言った。
「年のせいか、用心深くなっちゃってお客様が来ても隠れている事が多いのよ。」
20年前に俺が公園で拾ったミィも白い猫だった。
ミィが成長したら、きっとこんな感じだったんだろうな…
しゃがんで、頭をゆっくりと撫でた。
岡崎家のミィは目を細めてすぐにゴロゴロと咽喉を鳴らし始めた。
ミィと入れ替わった猫は、母にシュガーと名前を付けられた。
三善家に相応しい猫…
志織と同じ、血統書付きの高価な猫。
ペットすら自分で選べない事を思い知らされた俺は、俺の人生の全てを演出しようとする爺いに憎しみを覚えた。
そして、俺にとって、シュガーはその象徴になった。
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