最後の贈り物

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涼が亡くなった事を俺は瑞希に言えずにいた…。 今、こんなにも頑張ってる瑞希に…絶望を与えたくなかった。 入院した翌日以来、瑞希に会いに来ない涼を不審に思ったのか瑞希が聞いてきたけど、俺は仕事が忙しいみたいだよと言った。 「抗癌剤治療のおかげなのかな、最近なんだか調子いいのよ」 微笑んでくれる瑞希のおかげで俺は涼を失った悲しみに崩れずに何とかいられるような状態だった。 「じゃ、ちょっと早いけど一度家に帰ってから出勤するから… そろそろ行くな」 少しだけ寂しそうな顔をして、すぐにニコっと笑ってくれる瑞希にそっと唇を重ねた。 「いってらっしゃい桔平」 「いってきます瑞希」 病院を出ると、約束してた門倉さんが、外のベンチで待っていた。 「倉橋さん、お忙しい中すいません」 「いえ、こちらこそわざわざすいません」 黒塗りの車に乗せられて俺は涼の住んでいた部屋へと案内される。 いわゆる、”形見分け”ってやつをしてもらえるという事だった。 初めて訪れた涼の部屋は、白い壁にモノトーンの家具で統一された… あまり生活感のない部屋だった。 「倉橋さん、どれでも気になるものがあれば持って行ってやって下さい」 門倉さんに言われ、俺はクローゼットの中を見てみる。 涼さんらしい… 白のスーツばっかだった。 門倉さんはサイドボードの引き出しを開けて細かいものを出している。 …形見分けなんて… 本当はそんなもの欲しくなかった。 なんで涼さんが… 本当はあの時、的場に刺されるのは俺だったのに…。 結局俺は何も選べないまま、ソファーに座りこんでしまった。  
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