温もり

2/8
前へ
/147ページ
次へ
涼が亡くなってもうじき1ヶ月。 あれから的場は自首して、抗争にはならずに済んだと門倉さんから連絡をもらった。 本音を言えば、俺が的場を殺してやりたいくらいだったけど… 今日は瑞希の外泊許可の日。 俺は朝から部屋の掃除をして、瑞希を迎えに病院へ向かった。 「桔平!遅いっ!」 よほど外泊が嬉しいのか、12時に迎えに行ったら瑞希がプンプン怒ってる。 「だって昼飯食ってからって先生に言われたろ?」 「早く帰りたいの! もう病院飽きたもの…」 まるで子供みたいにダダをこねる瑞希に思わず笑った。 「よし、じゃ帰ろうか」 俺が差し出した手に一瞬顔を赤らめた瑞希が、そっと手を絡ませる。 …考えてみたら… こうやって手を繋いで歩くのも初めてだった。 細くて綺麗な瑞希の指先までが愛しくてそっと指を絡ませて行くと瑞希もニコっと笑って俺の腕におでこをつけた。 一緒に病院を出て、夕食の買い物にスーパーへ寄った。 「今日は一緒に料理しようね」 そう言って、瑞希はハンバーグの材料をカートに入れて行く。 …俺の好きなハンバーグ… 覚えててくれたんだ…。 「よし、じゃ俺は今度こそ失敗しない野菜炒め」 二人でクスクス笑いながらカートに材料を放り込んだ。 瑞希が俺を拾った時もこうして一緒に買い物をした。 あれからまだ4ヶ月しか経ってないなんて嘘みたいだ。 あの頃に… もう一度戻りたい…。  
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3231人が本棚に入れています
本棚に追加