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「14年前って…?」
俺の質問に瑞希はゆっくりと話し始めた。
「あれはまだ桔平が5歳で
私は8歳の頃だったわ…
当時私は親に虐待を受けてて、いつも家に帰れずに、学校帰りに公園でただ時間が過ぎるのを待ってただけだった…
早く家に帰ればその分、親に叩かれるって思ってね、家に帰るのが怖かったの…」
涼から聞いてはいたけど、瑞希の口から虐待の話を聞くのは初めてだ…。
「あの日も、いつも通りに公園のベンチで宿題をやってた時だったわ…
『おねえちゃん、お勉強おうちでしないの』
って5歳の桔平が私に話しかけて来て…
『家になんか帰りたくないのよ』
って私が言ったらね、桔平が
『どうして?おうち嫌いなの』って聞いて来たの。
あの頃の私は人見知りが激しくて友達もいなかったから、小さな桔平に心配してもらえるのがすごく嬉しくて…
『おねえちゃんね、おうちに帰るとママに叩かれるの。ママはおねえちゃんが嫌いなのよ』
って言ったの…。
そしたらね…
まだ5歳だった桔平が…
『じゃ僕がおねえちゃんのママに言ってあげるよ!おねえちゃん叩かないでって』
そう言って私の頭を撫でてくれたのよ」
瑞希の話を聞いて、かすかに残っていたあの公園でのシーンが浮かんで来る…。
なんだかすごく寂しそうにベンチで短い鉛筆を持ってノートに何かを書いてた女の子の姿…。
「桔平に頭を撫でられてね、私すごく嬉しくて…
親にも撫でてもらった事なかったから…
『ありがとう』って言って泣いてしまったわ。
そしたらね…
5歳の桔平がこう言ったのよ…」
俺はその瞬間、14年前の事を急に思い出して瑞希に言った。
「『僕がおねえちゃんのこと、ずっと守ってあげる』
…そう言ったんだろ、俺?」
瑞希の瞳から、涙が溢れ出した…。
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