さよならは言わないで

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すぐに看護師が瑞希の様子を見に来て、忙しく動き始める。 「倉橋さん、すいませんが少しそちらでお待ちください」 瑞希のベットから離されると同時にドクターが走って来て、瑞希に聴診器を当てる。 テレビドラマでよくあるような、心電図の音なんてここでは鳴ってないから… 瑞希の心臓が今も動いてるのか、止まってるのか俺には解らない…。 ただ… ドクターの手が、瑞希の胸に当てられて心臓マッサージが始まった事で、心肺が停止している事に気づいた…。 必死に心臓マッサージをするドクターを、ただ見つめて呆然とする。 やがてドクターの手が止まり、胸のポケットからペンライトを取ると瑞希の瞳を照らした。 確認が済むと、腕時計で時間を確認する…。 「23時48分…ご臨終です」 そう言って俺に頭を下げるドクターの言葉で、瑞希が死んだ事を機械的に伝えられた。 瑞希… 涼さんが迎えに来たなら仕方ねぇな…。 ホントに瑞希の最期は涼さんに返す事になっちまったんだな…。 俺はただ黙って頭を下げた…。 風薫る緑の映える季節。 俺と瑞希の時間は… ついに終わりを迎えた…。    
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