海の見える場所

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瑞希の葬儀の3日後、門倉さんの迎えで俺は海の見える霊園にやって来た。 駐車場から小高い丘に向かって伸びる白い手すりの階段を登って行くと、ぱっと目の前にキラキラと輝く海が広がる。 サラサラと流れて来る潮風を浴びていると 「こちらです」 門倉さんに案内されて、真新しく整備された一角へと入って行くと、新しい墓石がいくつか並んでいた。 涼の組の人たちが、真新しい大きな墓石の前で俺と門倉さんに頭を下げて整列している。 「こちらが涼の墓、その奥が瑞希さんの墓です」 門倉さんに言われて視線を送る。 『冴木涼之墓』 『飯島瑞希之墓』 ふたつ並んだ墓石は作りも使っている石も全く同じで、生前のふたりそのものだと俺は思った。 ここで… これからは涼さんと瑞希は一緒に海を眺めながら穏やかに過ごして行けるんだな… そう思うと自然と涙が溢れそうになる。 住職がお経をあげて、涼の骨壺を墓の中に収めると、門倉さんと俺が涼の墓の石をずらして蓋を閉じる。 「涼さん… 今までありがとうございました…。 ゆっくり休んで下さい… 来月には瑞希もここへ連れて来ます… それまでは…もう少し俺と瑞希を一緒にいさせて下さい」 俺は涼の墓に向かって頭を下げた。 「倉橋さん… 今日は本当にありがとうございました。 何かあったらいつでもご連絡下さい」 門倉さんにマンションまで送ってもらって俺はまた瑞希の部屋へ帰って行った。  
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