普通の幸せ

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キッチンで美優が料理に専念してる間に優斗が言った。 「なぁ、桔平。 お前、これからどうするんだ?」 「え?…あぁ…まだ何も考えらんねぇ…」 「そうか…そりゃ気持ちも解るけどさ… お前、店も辞めて今仕事もしてないんだろ?」 「うん…」 「またいずれは黒服に戻るのか?」 …あの店には瑞希が倒れてから本当に世話になったけど… 正直な話、黒服の仕事は瑞希のそばにいたかったからやってたってのもあった。 「たぶん…戻らないと思う」 俺の言葉に優斗はニコっと笑って言った。 「じゃ、俺と一緒に汗かこうぜ!」 「…え?…俺…そういう趣味じゃ…」 「バカ野郎!何妄想してんだよ! 俺と一緒に俺んちの会社で働こうって意味だよ!」 「…あぁ…そっちか」 散々ゲラゲラ二人で笑ったあと優斗がフッと笑って言った。 「俺な、桔平と一緒に俺んちの会社、もっとでかくして行きたいんだよ。 お前は俺にないものたくさん持ってるし、力になってくれるって信じてる。 これからもお前とはずっと支え合って生きて行きたいんだよ」 優斗の言葉に俺はグッと胸に何かが込み上げて来た。 「瑞希さんがいなくなったってお前はこれからも生きてかなきゃならねぇだろ? これからは俺と美優が桔平を支えてくからさ、 桔平も前向いて生きてこうぜ」 「そうそう!私は前にも言ったけど、桔平が疲れたらいつでも帰っておいでって言ったでしょ? 私もこれからもずっと桔平支えるから!」 キッチンでフライパンを揺すりながら美優も声をかけて来る。 「…お前ら…」 思わず涙が溢れそうになって瑞希の遺影を見つめた。 なんだか瑞希が笑ってそこで頷いてるような気がした…。  
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