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学校を終わって、俺はまた瑞希の部屋へ向かっていた。
なぜだか瑞希が気になって仕方なくて、早く会いたいと思い始めてる自分に戸惑いながらも薄汚いあの街を進む。
「よぉ少年」
後ろからかけられた声に俺はビクっとした。
振り返るとあの冴木涼が相変わらず冷酷な目で俺を見つめていた。
「瑞希んとこ行くのか?」
「…はい…」
「まぁちょっと話そうや」
有無を言わさず俺に背中を向けて歩き出す涼の後に続いて俺も歩き出す。
薄暗い喫茶店の中に入って行く涼。
店に入るとまるで指定席のように一番奥の観葉植物に囲まれた席へと座った。
「お前…瑞希に感情なんか持つなって忠告してやったのに…
どうも解ってねぇみてぇだな」
いきなり的を突き刺して来る涼の言葉に俺は何も答えられなかった。
「瑞希に惚れたか?」
「…いえ…良く解らないです」
「何度も言うが、あの女は俺のモンだ。
誰にもくれてやる気はねぇ」
「…瑞希サンが…
涼さんは感情がないって言ってました…」
涼はクスっと笑って言った。
「感情ね…確かにねぇかもな」
「瑞希サン…命の欠片を俺にくれるって言ったんです」
涼は黙って俺をじっと見つめた。
「瑞希サンの残りの1年、俺…瑞希サンのそばにいちゃダメですか?」
「お前が辛くなるだけだぞ」
「…解ってます…。
でも…なんかあの人…」
「お前の好きにしろ。
だけどな…アイツの最期は俺のモンだ。
それだけ守ってくれたら認めてやるよ」
そう言った涼の冷酷だった目が少しだけ寂しそうに俺には見えた…。
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