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瑞希が休みの日の事だった。
営業が終わった店内で、今日はキャストの愚痴聞き大会なんてのが行われている。
他の黒服がキャストの愚痴を聞くのを横目に俺は早く帰りたくて掃除に専念していた。
「倉橋桔平くん」
「はい?」
俺を呼ぶキャストの声にふと顔をあげると、この店のNo.1の瑛梨香が立っていた。
「ねぇ、少し話さない?」
「…あー…いいですよ」
本当はめんどくせぇなと思ってたけど、キャストには逆らえないのがこの店の黒服の掟みたいだったし、仕方なく頷いた。
「来て…」
俺は瑛梨香に手を引かれて、奥の控室へと連れて行かれた。
「やっと二人きりになれたわね、桔平くん」
No.1ってだけあって、顔立ちもスタイルも…その仕草までもが美しい瑛梨香に一瞬吸い込まれそうになる。
瑞希と出会う前の俺だったら、間違いなく手を出してる女だ。
「どうしました?瑛梨香さん」
俺は冷静を装って言った。
「解ってるでしょ?」
そう言って絡みついて来る瑛梨香に俺は、あくまでも冷静に受け答える。
「ダメですよ、瑛梨香さん。
今日は飲みすぎたんですか?」
すると瑛梨香はニヤリと妖艶な笑みを浮かべてこう言った…。
「そんな冷たい態度取ってると…
瑞希の事、言っちゃうわよ」
…俺は背中が凍りつくような感覚を感じた。
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