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キャストがみんな引けて、やっと黒服が仕事を終わりにしたのはもう朝方4時を回っていた。
俺は瑞希の部屋のエレベーターのボタンを押さずに、最上階のボタンを押す…。
何とか瑛梨香と話をつけなきゃいけないと思った。
瑞希が店を辞めるまであと半月。
ここでこんな事をバラされたら、俺も瑞希も破滅する…。
不安を抱えながらも、瑛梨香の部屋のドアを叩いた。
「待ってたわ、桔平…」
バスローブに身を包んだ瑛梨香が俺の手を引く…。
リビングのソファーに俺を座らせると、瑛梨香はビールをついだグラスを持って来た。
「とりあえず飲みましょ?」
「いや…俺まだ未成年なんで」
「いいじゃない、1杯くらい」
「…解りました」
仕方なしに瑛梨香と乾杯する。
早く話をつけて瑞希の部屋へ戻りたかった俺は、ビールを一気に飲み込んだ。
「瑛梨香さん…
瑞希には…手を出さないでもらえませんか?」
「いいわよ?
桔平が私を抱いてくれたらね」
「…いや…それは出来ないです」
「ふぅん…そう…」
瑛梨香はビールをコクっと飲んでタバコに火をつけた。
煙を吐き出しながら
「そんなに瑞希が大切?」
と聞いて来る瑛梨香に俺は黙って頷いた。
「…だって…
瑞希、もうじき死んじゃうんでしょ?」
怪しく笑う瑛梨香の言葉に俺の背中が再び凍りついた…。
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