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「ね…私だけの桔平になって」
俺の唇に触れながら言う瑛梨香に俺は返事が出来ず黙っている。
「…瑞希に聞いてみなさいよ。
涼の事、愛してるんだろうって。
桔平はもう瑞希を涼に返すべきよ。
アナタも解ってるでしょ?」
俺をじっと見つめながら言う瑛梨香に頷けないまま、俺はベットから起き上がって服を着る。
「…まぁいいわ。
いつでもここへいらっしゃい。
アナタの本当の居場所はここよ」
「…そうかもな」
俺は瑛梨香の部屋を出て、エレベーターに乗り込んだ。
瑞希の部屋のある3階のボタンを押す指が一瞬躊躇した。
それでも帰るしかない瑞希の部屋。
野良猫の俺の本当の居場所は…いったいどこなんだろう…。
そっとドアを開け部屋に入ると静まり返ったリビングのソファーで眠る瑞希の姿。
…きっと俺の帰りを待っていて、そのまま眠ってしまったんだろう。
俺はそっと毛布を瑞希にかけて、シャワーを浴びにバスルームに向かった。
熱いシャワーを浴びながら、俺のカラダに流れる水筋と共に、瑞希の命の欠片が流れ落ちて行くような気がした…。
…瑞希…
お前は俺よりも…
涼さんを今も愛しているのか?
確かめたかった…
もう…耐えられなくなっていた…
…俺…
…疲れたよ…。
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