冷たい現実

5/7

3231人が本棚に入れています
本棚に追加
/147ページ
「どんだけ金がかかってもいいからよ…瑞希を助けてやってくれ… コイツ…やっと本当の幸せ見つけたばっかなんだよ…」 涼の言葉を黙って聞いていたドクターは悲しそうな目で言った…。 「…もう…手遅れです…。 複数個所に転移も見られます。 抗癌剤治療をすれば、少しは延命出来ますが… 完治は不可能です…」 俺はその場にひざまずいた…。 もう…立っている事も出来ないくらいだった…。 瑞希… 覚悟はしていたけど… やっぱりお前がいなくなるなんて、俺にはとても受け入れらんねぇよ…。 処置室のベットで眠っている瑞希の顔を見つめながら、涙が溢れるのをそのままに、ただ俺は呆然とした…。 その夜は一晩中瑞希のそばにいた。 「また明日の朝来るから」 そう言って涼は帰って行った。 時々、瑞希の顔が苦しそうに変わるたびに俺は瑞希の手をさすった。 瑞希が明日の朝、目覚めたら俺はどんな顔で瑞希と話すんだろう…。 静か過ぎる長い夜… 瑞希… 俺を置いて逝かないで…。  
/147ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3231人が本棚に入れています
本棚に追加