AM 6:30 にゃん

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ここが何処かも分からない。 息も絶え絶え、今、死物狂いで走っている。しかし、全速力で走っているつもりではあるが、足が少し浮いた感じがして想う様に走れない、もどかしさを感じる。 そこは暗闇だが、目の前に真っ直ぐ伸びた道だけが辛うじて見えている場所。 そんな場所で俺を追ってくる奴がいる。その正体はよく知ってる筈だが、何故か名前と顔が思い出せない。いや、思い出したくないと言った方が正しいのかもしれない。きっとそうだろう。 毎日毎日、よくもまあ理不尽な事を言う嫌な奴なんだ。 自分の失敗を押し付けるわ、一度も聞いた事の無い事に対し、こっちが聞かない方が悪いなどと言う。知らない事実を、どうして質問できるんだ。 本当に、性根が腐った野郎だ。 俺は最近、こいつのお陰で髪の毛の抜け落ちる本数が増えたんだ。 「畜生め!」 その悔しさの余り思わず叫んだ俺は、その怒りのエネルギーを源に、更に全力で走った。
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