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「申神様……ねえ。猿なら頭が良くて動物園でも飼われているから大丈夫そうね。最悪でも、ティルに交渉してもらえば何とかなりそうだわ」
右手人差し指を顎に当てて上を向いて考えながら、オルジェはそんな適当なことを平然と言ってのけた。
ティルもティルでお任せなんだじぇと、胸を左手で軽く打ち鳴らしながら自信満々に引き受けている。
いつも不思議に思うんだが……この二人(一人と一匹か?)の根拠の無い自信は、どこからやってくるのだろうか。
「交渉が決裂しても、力ずくで何とかすればいいね」
「ち、力ずく……ですか?き、気は進みませんが……イ、イーレンさんがそう言うなら、お、及ばずながら僕も微力を尽くさせて頂きます……」
「……正義の味方のセリフじゃないな」
イーレンとミフィトの言葉を聞いた俺は、思わずそう呟いていた。
もっとも、そんなものになった覚えはなく、世界を救うヒーローを気取るなどさらさら無いが。
「うん、みんながそう言うなら、何とかなりそうな気がするんだじぇ!よーっし、聖森パルミドへレッツラゴーなんだじぇ!」
「張り切って行きましょう!」
ティルに続くように元気に声を上げたオルジェ。
今の今まで歩くのさえフラつくような不調具合だったのに、もうそんなに元気になったのかと信じられない思いで、俺はオルジェの横顔を凝視した。
俺だけでなく、イーレンとミフィトも同じことを思ったようで、二人共驚いたような顔でオルジェを見つめている。
「んっ?何よ、三人揃ってあたしの顔をじっと見つめちゃって……。何か付いているの?」
俺達に見られていることに気付いたオルジェが、怪訝そうに眉を潜めてズイッと上半身を前に出して訊いてきた。
俺が答える前に、首を左右にぶんぶん振りながら、い、いえ……とミフィトが言葉を返す。
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