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聖森パルミド。
突き抜けるような青空が見え、この世のものとは思えないような不思議な色合いの花々が咲き誇り、適度に水滴を携えた深緑色の木々の葉が生い茂ったその森で、俺達は……ただひたすら走っている。
無論、駆け足などという生半可なものではなく、それはもう全力疾走で。
その理由は一つ……“ある生き物”に追われているからだ。
「シュニーン!」
妙な鳴き声を上げながら頭を左右にブンブンと振りながら、俺達を追ってくるその生き物は……サイ。
サイといっても、ただのサイではない。
灰色がかった青色の体に、湾曲した太い角と鋭く尖った二本の牙を持つ体長三メートルほどの巨大サイ……異形獣のスティールリノ(鋼サイ)だ。
「はあはあっ、ううっ……な、何もしていないのに、ど、どうして僕達がこんな目に……」
「はあ……まったくだわ!魔法も直接攻撃も……っ、効かないなんて卑怯よ!」
「いや、聖地に土足で入り込んで攻撃を仕掛けた時点で、俺達にもだいぶ非はあるだろうけどな……」
ミフィトは悲劇のヒロインのように嘆き、反対にオルジェはムゥと口を尖らせて不満をぶちまけている。
そう、この異形獣……スティールリノが厄介なのは、武器や魔法による攻撃を一切受け付けないところだ。
ミフィトは使える黒魔法を全て使い、俺とイーレンは武器と素手で攻撃し、オルジェは杖と白魔法を使ってみたが、鋼でできたスティールリノには全くもって効かなかった。
ならば……と、ティルにも呪術と時繰術を試させたが
「はれっ?おかしいな……発動しないんだじぇ」
呪文を唱えても、術が発動しなかった。
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