『春』部門

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「あぁ。 もちろんさ。 僕は『桜先生』を恋愛対象にした事はない。 ただ憧れていただけだ」 あたしの涙をそっと拭き取り三宅先生は優しく笑った。 夕日に照らされた三宅先生の笑顔はとてもかっこよく見えた。 「あ、三宅センセ。 見て、桜の木……」 ふと桜の木を見てあたしはある事に気付いた。 「蕾だ!」 三宅先生もあたしと同じとこに視線を映し目を見開いた。 この『咲かない桜』にぽつぽつと蕾がついている。 「嘘みたい。 この木は一生懸命花を咲かそうとしてるんですよ」 あたしは純粋に生命の神秘に感動した。 「奇跡だ。 まるで生きる力を教えてくれてるみたいだ」 三宅先生も目をキラキラさせ、まるで子供のような表情をしている。 「三宅センセってロマンチストよね」 そうなんだよね。 普段は気づかなかったけど、この短時間で大分ロマンチックな面を見せ付けられたような気がする。 「……僕、変かな?」 顔を赤らめ三宅先生は頭をポリポリかいた。 「ううん。 あたしは素敵だと思います。 色んな方向から見れてるんですよ。 あたしの事も見てくれてましたしね」 あたし……。 今笑ってる? あたしまだこんな風に優しく笑えたんだ。 ……よかった。
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