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少し移動するとある一本の桜の木のとこで三宅先生は足を止めた。
「この桜は僕がこのガッコの生徒だった頃から咲いたとこを見た事ありません」
満開の桜の中に混じって一本だけ花が咲いていない桜の木がある。
三宅先生はその桜にそっと触れた。
「……三宅センセが学生の頃って何年前です?」
わざとあたしは意地悪を言う。
「……秘密です。
貴女は見た事あります?」
ん?
何か上手くはぐらかされたような気がしたけど……。
まぁ、いっか。
「言われてみればそうですよね」
あたしが入学した時からこの桜が花を咲かせたのは見た事がない。
入学式の日にこの桜を見て不思議に思ったような記憶がある。
「僕は信じてます。
いつかこの桜に花が咲くと」
三宅先生はそっと目を閉じた。
「ロマンチックなんですね」
今風の若い先生なのに何か不思議な人だなぁ。
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