嫌われ者

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周囲は暗澹としているので、彼の姿は上手くカモフラージュされていた。今日のターゲットを物色しているとある建物の前で立ち止まった、彼の何千倍もある巨大な建物が目の前にある。 「今日は此処で決まりだな」 建物の周辺を概観し、窓が少し開いている事に気付き、しめしめと窓の隙間に入り込んだ。 抜けた先は寝室だった。ベッド、ナイトスタンド、時計しかないので殺風景だと彼は思った。時刻は22:00を少し過ぎていた。 「俺の目的の場所は此処じゃない」 寝室のドアは少し開いていた。彼は違う部屋に移動するためにカサカサと動き出した。 その時、ドアの向こうから大音声が聞こえてきた。 「好き嫌いしないで、全部食べなさい」 「うるさい。こんな不味いもん食えるか」 ドタドタと足音がした後、バタンとドアの閉じる音がした。おまけにカチッと施錠の音まで。 廊下を進むとドアから微光が漏れている部屋を見つけた。ドアは閉じられていたが、彼は隙間から通る事が出来た。 「隆士は好き嫌いが多くて困るわね」 巨人の女が困却した顔をしていた。 だが、そんな事は今の彼には関係なかった。このキッチンが目的の場所で、此処からある物を盗み出す事が目標だったからだ。 彼は、捜索する為に特技である壁走りをした。部屋の隅には仲間達が噂していた入ったら脱出不可能な紙の家もあった。 壁を上がると目標をテーブルの上に見つけ、今夜は大物だと彼は歓喜した。 彼は、巨人の女が目標から離れたタイミングを見計らって壁から自慢の羽を使って飛んで、見事に目標の近くに着地した。 すぐに運び出そうとしたが、それは失敗に終わった。 彼の背後では、巨人の女が右手に丸めた新聞を持ち満悦そうな表情でこう言った。 「ゴキブリ潰した」
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