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いつからだろう…
会長のからかいの言葉を受け流すようになったのは…
去年の秋、会計として生徒会に入った当初はもっと慌てていたのに、今はこんなに冷静だ。
「美結ちゃん?」
「…何でしょう」
「――好きだよ…」
「…。…また冗談ですか」
「うん。でもそれを聞いた美結ちゃんの顔が赤くなるのは確かに好きだから、あながち間違いでもないかもね?」
「…そうですか」
ああ…そうだった。
会長が言う『好き』に何の感情も込められていないと気付いた時から、私は慌てることもなくなったんだ。
「…では、片付けは終わりましたので帰ります」
「また明日ね、相沢さん」
「…帰るんだ?」
「はい。会長は引き続き自分のお仕事頑張ってください」
「城田~美結ちゃんが冷たいよ~」
「自業自得って言葉をいい加減覚えなさい」
「お疲れ様です、悠里先輩」
「俺には~?」
「…さよなら、会長」
『お疲れ様』なんて言えないような仕事ぶりに、返す言葉はそのくらいしか思い付かなかった。
またね~って言う会長を尻目に、私は生徒会室から立ち去った。
「…可哀想な相沢さん…こんな変人に気に入られるなんて…」
「城田、うるさい」
「貴方にはもう少し紳士的になることをおすすめするわ」
「…余計なお世話。俺はこれでいいの」
でも――…
この時の会話も、会長が何を考えていたのかも、私は知るよしもなかった。
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