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2015年3月2日、姉が死んだ。 交通事故だった。 26歳だった。 20歳で保育士の資格を取り、4年間働いたあと、「やっぱり私は看護師になりたい」と突拍子のないことを言い、自分で働いてためた金で、学校に行き始めたのだった。 まだまだやりたいことがあったはずなのに……。 俺は涙が止まらなかった。 弟の俺を彼氏のようにかわいがってくれ、みんなに優しかった姉さん。 今、ベッドに横たわっている「モノ」と、姉さんが同じだなんて、信じられなかった。 いや、信じたくなかった。だが、姉さんの携帯が鳴り始め、思考は現実に引き戻された。 携帯から流れ続ける音楽を姉さんは止めなかった。 だがメールだったらしく、音楽は7秒で止まった。 「7秒が、この着信音の一番キリのいいタイミングなのよ。」 姉の言葉が脳裏によみがえる。 このときに、「姉は亡くなりました」と返信すればよかったのだろうが、その内容を見て、俺は固まった。 「From タカシ アヤ、君は幸せだった? 君が死んだなんて、まだ信じられないよ。 こんなメールを送る時点でバカだよね、僕って。 でも、僕は君を愛していた。 もし天国でこのメールを見ていたなら、笑ってよ。 返信なんて来るわけないのに……バカだよ、僕は……」 姉さんの事をこんなにも思ってくれた人がいたなんて……。 俺は無意識のうちに、「返信」を押していた。 「タカシ、私もあなたを愛していた。大好きだった。 あなたと一緒になる前に死ぬなんて、悔しい。死にたくなかった。 でも、タカシには幸せになって欲しい。 私はもうタカシを幸せには出来ないけど、私なんかより素晴らしい女性はたくさんいるから、私を嫉妬させるくらい幸せになってよ。 でも、たまには私のことも思い出してね。」 文ごとに1行隙間を空ける。これが姉さんの癖だった。 こんな返信をするのがいいことではない。冷静に考えればわかるのだが、姉さんを亡くして精神的に落ち込んでいた俺には、それは出来なかった。 「送信完了しました。」 携帯の画面に表示された文字を、センターキーで消すことはせず、黙って画面を見つめていた。 すぐに、メールに返信は来た。
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