36人が本棚に入れています
本棚に追加
私は改めて辺りを見回した。
すると、ベンチに座る老婦人が目に留まった。
「お隣、よろしいですか?」
私は聞こえないとはわかっていたが、いつもの癖で老婦人に声をかけた。
そして座ろうとしたが、私の体がベンチに触れることはなく、地面に派手に尻餅をついた。
「あんた……死んだばかりかねぇ。」
それを見て突然、老婦人が私に声をかけてきて驚いた。
「わ……私が見えるんですか?」
私は老婦人の方に顔を向けた。
「あたしゃ50年前に死んだからね。いい加減生きてる者と死んでる者の区別ぐらい付くよ。」
老婦人は私の方を見て、呆れたような表情を浮かべた。
私は新人幽霊、彼女は先輩幽霊と言うわけか。
「あんた、若いのにこんなところに来るなんて……死んでからも勉強を続けようとは勤勉だねぇ……」
だが、先輩は何か勘違いしているようだった。
彼女なら何か知っているかもしれない。
私は今までのことを話し、何とか彼に伝える方法はないか、と相談してみた。
彼女は少し考えたようだが、当たり前すぎることを言った
「あんた、自分で伝えればいいんじゃないのかい?」
最初のコメントを投稿しよう!