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それはわかっている。 だが、それは無理だった。 「でも、声をかけても彼は聞いてはくれませんでした。」 私は再びベンチに座ろうとしたが、やはり私の体はベンチをすり抜けた。 「そりゃあんた、死んだばかりで霊体がこっちに馴染んでないんだから当たり前だろう?」 座れない私を見て、老婆は笑った。 「いいかい?ちょっとこっちに来てごらんよ。」 老婆は私の手を引き、学校の記念碑の前に立たせた。 「馴染んでるかどうかの基準はこうして見るんだ。」 言っている意味がわからなかったが、すぐに記念碑の前にカメラを持っている男女が来たことに気付いた。 「撮るよー。」 老婆は私の耳元で 「出たい、と強く思うんだ。」 と、言った。私は言われたとおりにこの世に出たい、意思を伝えたいと頭の中で唱えた。 しばらく唱えていると、カメラのフラッシュが私の体を照らした。 そして写った写真を見た男女は、悲鳴を上げた。 「写真が……赤くなってる!」 「見ろよ!記念碑の右、ババアが写ってるぜ!」 「私の肩に手が!」 その様子を見て、老婆は不満そうにカメラを持っていた男性を蹴った。 「初代学長に向かってババアとは失敬な!」 「あの……。」 私が話しかけると、老婆はようやくこちらに顔を向けた。
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