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暑い。 俺は額に流れる汗を腕で拭った。 今日で姉さんが死んでからちょうど5ヶ月。 あれから、タカシとのメールはずっと続いていた。 結局、姉さんの通夜には行ったが、告別式には行かなかった。 タカシに会うことは出来なかった。タカシに会わせる顔がなかった、と言うのが正しいか。 騙し続けていた相手に会わせる顔などあるはずがなかった。 「着いた……。」 俺は目的地に着き、立ち止まった。 姉さんの通っていた学校。タカシはここにいるはず……。顔を見るだけならいいだろう。 俺は姉さんの学生証の写真を貼り変え、この学校の学生になりすまし、校内に入り込んだ。 だが、入り込んでから俺はあることに気付いた。 タカシを探す方法を考えていなかったのである。それに、俺はタカシの名字を知らなかった。 姉さんは携帯で、彼の名前を「タカシ」と登録していた。 だから、俺はタカシの名字を知る機会がなかったのだった。 かといって、今更「タカシの名字って何だっけ?」などときくわけにはいかない。 結局、何の収穫もないまま帰ることになった。
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