偽物の恋

――８――

「聞いたか？第３講義室の……」

「事故死した学生でしょ？」

「噂によると……」

最近学校では、私の話題で持ちきりだ。

現世に意識を伝えるために、初代学長から教えてもらった方法で、物を動かす練習をしていた。

講義室で練習していたところを学生に見られ、その話題が人から人へ伝わっていったのだった。

「今度は図書室にでも行こうかしら……」

壁をすり抜けて図書室に入ろうとした瞬間、私の手に壁の感覚が伝わり、カツンと小さな音を立てた。

「触れられた……？」

私は確かめようと思い、壁に寄りかかってみた。

数秒後、私の体は壁をすり抜けて、図書室の中に倒れた。

「いったー……。」

私はゆっくりと体を起こし、図書室の本を手に取った。

「少しずつ……少しずつ……」

初代学長に言われたとおり、私は本に静かに触れ、少しずつ動かした。

だが、本は私の手をすり抜け、床に落ちた。

「何でっ！」

私は苛立ちから、強く床を叩いた。