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だが、そんな彼女が昨日、3月2日に亡くなってしまった。
死因は交通事故で後頭部強打による脳挫傷。
最初は信じられなかった。だが、病室のベッドに横たわる彼女。
泣き崩れる彼女の家族。
動かない手、足、口。開かない目、血色の抜けた肌、硬直しきった筋肉。
これらを見て、アヤは死んだ。ということを実感した。
僕の心の中を、鉛のような黒く重い物が支配していった。
アヤはもう喋らない。笑わない。動かない。
その事実を認めた瞬間、僕の涙腺のダムは決壊した。
一生分流れたのではないか、と思うほど涙が流れた。
「何で……何でだよーっ!」
喉の奥から絞り出すようにそう言っていた。
「私たちって、生まれたときは泣いてるけど、周りの人たちが笑ってるじゃない。だから死ぬときは周りの人が泣いても、私は笑ってたい。」
彼女が生前言っていた彼女の好きだった言葉を思いだし、さらに涙が流れた。
いきなり車がぶつかってきて、何がなんだからわからないうちに死んだはずなのに、アヤはかすかに笑っていた。
それを見ると何だかやりきれない思いにかられ、僕はすぐに病室を後にした。
彼女は、アヤは死んだ。
それは知っていたが、現実逃避するようにあのメールを送ったのだった。
もしかしたら返信が来るのではないか。
そんなわずかな希望を託して……。
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