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人通りの波を避けるように、歩いていた時、経吾の体は異様な物を感じた。
その異様さは以前に感じたもの。
頭より、体が覚えている。
霊武者の気を。
たまらず、立ち止まる。
「どうかしたの」
「ああ、感じる、感じるぜ、霊気を、あの野郎のな」
緊張感が走り、息をのんだ。
「ま、まさかこの前の霊武者が、でもこの人ごみの中、誰に入り込んだのかなんてわかるの」
太一は首をひねり、異常がないか確かめる。
「わかるわけないぜ、奴は俺の存在に気づいてるのか」
「経吾君、左手が」
太一は経吾の妖しく光る左手を見た。
青白く光る左手から金属製のレンズか浮かび上がる。
左手をかかげ、辺りを写した。
まるで旅行客が珍しさにデジカメを撮りまくっている様だ。
手の平には写した画像が。
ゆったりと駅周辺を霊写する。
しかしその映像には、霊武者は写らない。
楽しそうにした人間だけが、写っている。
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