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「ダメだ、いない、どこにも」
「あっ、霊写機が消える」
太一がそう言うと同時に、左手から金属製のレンズは薄れていく。
あとには何も変わらない手の甲。
探すのを辞め、左手を下げた。
霊的な感触も消えていた。
「まいったぜ、こっちは会いたくね~のによ」
「ということは、霊武者の入った人間が近くにいた、そして離れていき遠くに行ってしまったと」
太一は冷静に状況を分析する。
霊武者の霊気に反応するなら、距離に関連して起動するように、設計されているのではと。
だとしたら霊気の感知機能を持っていることになる。
「つうことは、奴はだな、どうなったんだ」
経吾はアゴをつまみ、考える。
「考えられるのは、電車に乗って僕らから離れて行ったとか、または自動車で移動したかですね」
「なるほど、それでか、さては俺に恐れをなして逃げていったな、ダハハ」
腰に手を当てて、勝ち誇る。
「ええ」
太一も彼のその自身過剰さに、少し驚きひいてしまった。
「ただ相手が僕らを知ってて近づいたのかは、わからないですが」
経吾と太一は、お互いの携帯の番号を交換し、いつでも連絡できるようにした。
不気味な予感がわいてきた。
これから何が起こるのかと。
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