拝啓、とても遥かな甲子園様

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雨の日は、リビングのテーブルを横にどけて家の中でトスバッティングを練習した。 ――そんなある雨の日。 おかんのトスした新聞紙が、諒が振ったバットの芯を捉えて…… 見事に角度良く、眼を見張るスピードで和室のかもい上に掛けてあった――おかんがとても大事にしている【wedgwood Peter Rabbit シリーズ】の掛け時計に当たり…… 粉々に砕けて落ちた。 諒も明夫もルーも、顔色を変えておかんを見つめる。 (――た、大変なことをしてしまった) 諒はバットを持った手をだらりと降ろした。 おかんは真面目な顔付きをして黙って。 しばらく考えてから口を開いた。 「――ほんなら、新聞紙は卒業やね。次行こか」
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